20年待った「出自を知る権利」の法整備、踏み込んだ議論なく延期
第三者から提供された精子・卵子を使った不妊治療がある。国内でもすでに子どもが生まれ、成長した子から提供者の情報を求める声があがっている。「出自を知る権利」と呼ばれ、海外では保障する国もあるが、日本での動きは鈍い。法制化の見通しははっきりせず、子どもの権利は置き去りにされたままだ。
出自を知る権利
第三者の精子・卵子の提供によって生まれた子どもが遺伝上の親の情報を知る権利。日本が1994年に批准した子どもの権利条約にもうたわれている。国内で代表的なのは、提供された精子を使う人工授精(AID)。
「出自を知る権利は生まれた子どもの権利。提供者の意思によって開示される情報が変わったり、知ることができる子とそうでない子が出てきたりするのはおかしい」
日本弁護士連合会(日弁連)が参院議員会館(東京都千代田区)で5月に開いた集会。第三者の精子による人工授精(AID)で生まれた当事者の石塚幸子さんが訴えた。
石塚さんは23歳のとき、父親が遺伝性の病気になったことをきっかけに、母親からAIDで生まれた事実を知らされた。親が長い間、事実を隠してきたことに、「自分の出自は後ろめたいものなのか」と傷ついたという。「情報の開示に了承した人のみが提供者になるべきだ」
子に出自を話す選択も
一方、子どもに将来、事実を知らせようと考えている親もいる。
神奈川県内の30代の夫婦は昨年、デンマークに本社があり、日本語の窓口も持つ精子バンク「クリオス・インターナショナル」を利用して第1子を授かった。夫が無精子症と診断されたことをきっかけに、夫婦で話し合い、精子提供を受けることを決めた。
提供者は、「子どもに安心感を与えられるような人」にしたかった。サイトに登録された中から、出自を知る権利を保障しているなどの条件で70人ほどを選び、そこから、子どものころに日本のアニメを見ていたと書いていた欧州の男性を選んだ。
子どもには2、3歳ごろから…
【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら